むし歯以外の原因で起きる歯の物理的・化学的侵食の総称を指します。
酸性の飲食物や胃液の逆流により歯が溶ける酸蝕症、咬むことなどで上下の歯どうしがこすれ合うことによる咬耗、強烈なブラッシングによる摩耗はTooth Wearの一種です。このほかにアブフラクションという現象があります。
酸蝕や咬耗、磨耗はわかりますが、アブフラクションとは何でしょうか?
歯軋りなどで荷重がかかると構造上欠けやすいエナメル-セメント境界(歯ぐきとの境目付近)がV字型に欠けてくることがあります。これがアブフラクションです。
歯みがきによる磨耗とは違うので予防対策も違います。
歯周病などで歯ぐきが下がり歯根が露出している状態は磨耗しやすいので歯みがきの圧力や歯磨剤に含まれる研磨剤に注意が必要です。歯根はエナメル質ではなく軟らかいセメント質や象牙質で覆われているからです。
自分の歯の状態を正確に把握することが必要だと思われます。
酸蝕は文字通り酸によって歯が溶けるわけで柑橘類、炭酸飲料、清涼飲料水、酢などの酸性の飲食物がダイレクトに歯を溶かすことがあり要注意です。
あるいは塩素消毒されたプールで長時間泳ぐことで歯が酸蝕になるケースもあります。
水泳選手はプールの水に含まれる塩素によって歯が漂白されるともいわれます
嘔吐によって胃液が逆流して口に入り酸蝕になることもあります。
酸性飲食物をよく口にする人は酸蝕のリスクが高くなります。
レモン、グレープフルーツ、りんご、オレンジ、パイナップル、コーラ、コーヒー、炭酸飲料、スポーツ飲料、ジュース、ワイン、梅干、酢、ピクルス等数え上げればきりがありませんが、要するに「すっぱい」系統の飲食物には注意すべきです。ビタミンCやアスピリンなどの内服薬でも酸蝕の可能性があります。
健康に良いということで酢を毎日飲まれていた患者さんでやはり酸蝕になって歯が溶け落ちた例もあります。
レモンの皮やレモン汁で歯を磨く方法がありますが、これは非常に酸蝕のリスクが高くやめたほうがよいでしょう。
気をつけないといけないのは酸性飲食物を口にした直後は強く歯みがきしてはいけないということです。
むし歯でないのに歯が減っていく Tooth Wear にもご注意です。
*Tooth Wearには適当な日本語訳がありません
酸蝕症の原因は、いわゆる すっぱいもの を摂取しすぎることや、逆流性食道炎なとで胃液が口の中に昇ることです。
う蝕(むし歯)とちがって細菌(口腔内のむし歯原因菌)が原因ではないので、歯磨きやフッ化物洗口法のようなむし歯向けの予防法が通用しません。
歯のエナメル質はpH5.5で溶けてしまいます。
東京医科歯科大学の調査によると、市販の飲料120種のpH値を測定したところ、73%の製品がpH5.5以下でした。
調味料や柑橘類の調査でも多くがエナメル質を溶かすpH値を示しました。
例としてコーラ飲料はpH2.2で胃酸の数値(pH1~2)に近い(レモンのpHは2.1)。
栄養ドリンクは2.5、黒酢飲料は3.1、スポーツドリンクは3.5でした。
原因となるものの摂取量の減少のほか、原因となる飲料・食品などを長時間口の中に入れず、摂取後は水やお茶ですすぎ洗いし、歯磨きを行います。
しかし、歯磨きのタイミングは、食事の直前1時間と直後1時間は避けた方がよいでしょう。
炭酸を含まない水、お茶、淹れたてのブラックコーヒー、ストレートの紅茶は酸蝕の原因になりにくいです
要は飲みたくなるもの、美味しいものは
ほとんど酸蝕の原因になると言えます
くれぐれも飲みすぎにはご注意を
健康のためとお酢を飲むのは酢酸を飲むのと同じことです。ミカンの食べ過ぎ、スムージーにもご注意を
意外なところでは醤油や味噌汁も臨界PHよりも酸性です
米国空軍の歯科医の学会講演によると、砂漠地帯の空軍基地所属の整備兵にTooth Wearが多発したために調査したところ、砂漠の過酷な気候で整備作業に従事する兵士はコーラなどの炭酸飲料を多量に摂取していることが判明し、これが原因と結論付けたそうです。